「指示を待っているだけでは、これからの時代に通用しない」──そう言われるようになって久しいですが、「主体的に働く」とは実際どういうことなのでしょうか?
また、「主体性を持て」と言われても、現場でどう動けばいいのか、明確なイメージを持てない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「主体的に働く」の意味を明らかにしつつ、組織に依存せず自らキャリアを築くための思考法・行動習慣について、キャリア心理学の視点からも解説していきます。
主体的に働くとは?その本質的な意味
「主体性=自分勝手」ではない
まず誤解されやすいのは、「主体的に働く」=「好き勝手に働く」「マイペースに動く」ではないということです。
主体性とは、自ら考え、選び、責任をもって行動する力のことです。
たとえば、上司に言われたからではなく、「今の業務プロセスを改善できるかもしれない」と自ら提案する姿勢。
あるいは、社内にない専門性を学びにいく決断──そうした一つひとつが、主体的な働き方の具体例です。
組織に“期待しすぎない”という発想
主体的に働く人は、「会社が与えてくれるキャリア」ではなく、「自分でデザインするキャリア」という視点を持っています。
キャリア論ではこれを「プロティアン・キャリア」と呼び、従来の“終身雇用モデル”とは異なるキャリアの考え方として注目されています(Hall, 2004)。
つまり、組織内の昇進や異動だけに頼るのではなく、自分で学び、スキルを育て、人脈をつなぎ、未来を描いていく。そんな能動的なキャリア思考です。
主体性を高める3つのステップ
主体性を持つには、「どこに向かっているのか」が必要です。
それが明確でないと、目の前の仕事に意味を感じられず、やらされ感ばかりが募ってしまいます。
「3年後、こんな状態になっていたい」
「将来、こんな人たちと仕事をしたい」
──そんな、輪郭のゆるい未来でOKです。
「納得感のあるゴールイメージ」は、内発的動機づけ(intrinsic motivation)を生み出すエネルギー源になります(Deci & Ryan, 2000)。
主体性は、大きな決断だけに宿るものではありません。
むしろ、「今日の業務をどの順番でやるか」「誰に相談するか」といった、日々の小さな選択の積み重ねが、主体性を鍛える土台になります。
自分で決める→実行する→振り返る──
このループを回すことで、「自分の行動に手応えを持つ力=自己効力感(self-efficacy)」が高まり、より大きな行動も取れるようになります(Bandura, 1986)。
主体的に働く人は、「評価されるかどうか」ではなく、「これは自分にとって意味があるか」で動きます。
もちろん評価も大切ですが、それだけを軸にすると、思考が他者中心になり、行動が受動的になります。
成長にフォーカスすると、自分の内側からエネルギーが生まれ、モチベーションの持続にもつながります。
職場で実践できる「主体性」の行動例
シーン | 主体的な行動の例 |
---|---|
業務改善 | 作業フローを見直し、提案してみる |
1on1ミーティング | 相談だけでなく「自分の仮説」も話す |
スキルアップ | 会社の指示ではなく、自分の興味で学び始める |
人間関係 | 意見が違っても「伝えてみる」勇気を持つ |
まとめ|キャリアを会社任せにしない「選択力」が、これからの時代の武器になる
主体性は、特別な能力ではなく「意識」と「選択の習慣」によって育ちます。
変化の速い時代、会社や上司にすべてを任せる働き方では、どうしても限界が生じます。
これからの時代に求められるのは、「自分で考え、動き、選ぶ」力です。
その力は、一度身につければ、どんな環境でも自分らしく働く大きな武器になります。